この記事は初心者の方にもおすすめです。
目次
エアーインパクトレンチってどんな工具?


- エアコンプレッサーと接続し、圧縮空気を動力として、ボルト・ナットの締め緩めを行います。整備工場などでの自動車のタイヤホイールの着脱、工場などでの組み立て作業、建築現場でのコンクリート型枠や金型の着脱、など幅広い分野で使用されます。
- エアモーターによってハンマーを回転させ、ハンマーがアンビルを打撃することによる衝撃で締め付けを行います。
- 空圧のエアインパクトレンチは、同等能力の電動インパクトレンチに比べて小型でパワーがあります。
ビルディで一番人気のエアーインパクトレンチと、同等のAC100V電源式インパクトレンチを比較してみました。軽量・コンパクトさがお分かりいただけると思います。
機種 | トルク | 全長 | 重量 | 概要 |
---|---|---|---|---|
![]() | 700N.m | 108mm | 1.0kg | TONE エアーインパクトレンチ |
![]() | 620N.m | 280mm | 4.6kg | 日立(HiKOKI) AC100Vインパクトレンチ |
- 構造的にはエアーインパクトドライバーと似ていますが、より強いトルクとそれに耐える先端工具の取り付け部分の角ドライブが特徴です。
角ドライブ - アンビル(先端部)にソケットを取り付けて使用します。機種によってアンビルのサイズが異なり、取り付けられるソケットも異なるので注意が必要です。アンビルのサイズはメーカーによってソケット取付角・ソケット差込角・出力角などで表されています。
ソケット取付角は規格が統一されています。主要なサイズと呼び方は以下のようになっています。
径 | ミリ表記 | インチ表記 | 日本式表記 |
6.35sq | 6.35mm | 1/4″ | 2分 |
9.5sq | 9.5mm | 3/8″ | 3分 |
12.7sq | 12.7mm | 1/2″ | 4分 |
19.0sq | 19.0mm | 3/4″ | 6分 |
25.4sq | 25.4mm | 1″ | 8分 |
38.0sq | 38.0mm | 1・1/2″ | 1吋4分 |
ソケットは、基本的にインパクトレンチ専用のものを使用する必要があります。これは、通常のソケットでは、インパクトレンチの瞬間的な大トルクに耐えきれず破断したり、表面処理のメッキが剥がれたりするからです。
インパクトレンチ用のソケットは、手動用ソケットに比べて外径が肉厚で強靭性に優れています。

- ショートアンビル・ロングアンビル・低騒音・低振動・出力調整、などの機能を備えた機種もあります。
- この記事では、空圧式のインパクトレンチについてご紹介していきます。電動式のインパクトレンチはこちらをご覧ください☟

種類と選び方
それではさっそく、エアーインパクトレンチの選び方について見ていきましょう。重要な点を項目ごとにまとめてみました。締め付け能力と締め付けトルクで選ぶ
締め付け能力とは、どのサイズまでのボルトを締付けられるかという基準です。カタログでは、「適応ボルト:M33」や「能力ボルト径:38 mm」というように書かれています。
このサイズを大幅に下回るボルトは締めすぎになりやすく、このサイズを大幅に超えるボルトは本体に負荷がかかり、モーター損傷の原因になることがあります。締付けるボルトがこの締付能力に合うかどうかを確認してください。

M8やM12とはねじ径を表していて、M8はねじ径8mm、M12はねじ径12mmという意味です。
締付能力と締付けトルクはほぼ比例していて、締付けられるボルトサイズが上がると必要なトルクも増えていきます。
ボルトサイズと比例して、二面幅寸法も増えていきます。ソケットを選ぶ時には、二面幅寸法に合ったソケットを選んでください。


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普通ボルトサイズ | 二面幅寸法 | 締付けトルク目安 |
---|---|---|
M6 | 10mm | 3~5N.m |
M8 | 13mm | 8~11N.m |
M10 | 16mm | 16~24N.m |
M12 | 18mm | 29~41N.m |
M14 | 21mm | 46~66N.m |
M16 | 24mm | 72~104N.m |
M18 | 27mm | 100~142N.m |
M20 | 30mm | 141~203N.m |
M22 | 34mm | 192~284N.m |
M24 | 36mm | 244~351N.m |
M27 | 41mm | 358~517N.m |
M30 | 46mm | 484~700N.m |
M33 | 50mm | 661~958N.m |
M36 | 55mm | 848~1,227N.m |
M39 | 60mm | 1,100~1,595N.m |
M42 | 65mm | 1,350~1,967N.m |
M45 | 70mm | 1,700~2,475N.m |
M48 | 75mm | 2,030~2,954N.m |
M52 | 80mm | 2,640~3,848N.m |
※締付けトルクは、測定方法や使用条件によって異なりますので、あくまでも目安になります。メーカーによっても違いが出ますので、参考程度にお考え下さい。
ソケット取り付け角ドライブで選ぶ
エアーインパクトレンチで使用されるソケット取り付け角ドライブには、9.5sq、12.7sq、19.0sq、25.4sq、38.0sqの5種類があります。また、特殊なタイプとして、スプライン軸があります。互換性はありませんので、それぞれの角ドライブ規格にあったインパクトレンチ用のソケットが必要です。
こちらは、空研の同型エアーインパクトレンチの角ドライブ仕様とスプライン軸仕様です。先端部が違うことが分かります。



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ソケット取り付け角ドライブサイズが大きくなると、より大きなサイズのボルトを締められるようになります。
ソケット取り付け角ドライブサイズ | 適合ボルト |
---|---|
9.5sq | M6~M16 |
12.7sq | M8~M22 |
19.0sq | M19~M33 |
25.4sq | M33~M50 |
38.0sq | M50 |
形状で選ぶ
エアーインパクトレンチには、用途によって、ピストル型・Dハンドル型・ストレート型・アングル(コーナー)型の4種類の形状があります。作業内容に合った形状の機種を選ぶことで、作業効率を向上させることができます。
ピストル型
一般的な形状です。自動車整備工場や現場など様々な分野で幅広く用いられています。
参考 ピストル型ビルディで商品を見てみるDハンドル型
持ち手部分がD型になっているタイプです。比較的大型で高出力の機種によく見られます。このタイプではサイドハンドル・サイドグリップ付きの機種が一般的です。
参考 Dハンドル型ビルディで商品を見てみるストレート型
本体がペンのような形をしています。工場での組み立てラインなどの流れ作業で用いられています。
参考 ストレート型ビルディで商品を見てみるアングル型(コーナー型)
ピストル型やDハンドル型、ストレート型では入らないような狭い箇所でのボルト・ナットの着脱に用いられます。
参考 アングル型(コーナー型)ビルディで商品を見てみる内部構造の違い
エアーインパクトレンチは、エアモーターによってハンマーを回転させ、ハンマーがアンビルを打撃することによる衝撃で締め付けを行いますが、この仕組みにも様々なものがあります。各メーカーで採用しているタイプが違ったり、独自のものを採用していたりと興味深い部分になっています。普段使いでは気にする必要はない点ですが、知っておくと何かの時に役に立つ・・・かもしれませんね(笑)。
シングルハンマー式
エアモーターが1回転するとハンマーが1回打撃を行う方式です(1回転1打撃式)。シンプルなのでコストパフォーマンスに優れています。
参考 シングルハンマー式ビルディで商品を見てみるダブルハンマー式
ハンマーを2つ備えているので、エアモーターが1回転する間にハンマーがそれぞれ1回ずつ計2回打撃を行う方式です。(1回転2打撃式)
参考 ダブルハンマー式ビルディで商品を見てみるビッグハンマー式
シングルハンマーをより大型化して打撃力を高めた方式です。
参考 ビッグハンマー式ビルディで商品を見てみるピンクラッチハンマー式
1回転1打撃式ですが、効率のいいハンマーピンの動きにより、低振動で滑らかなトルクを生み出します。
参考 ピンクラッチハンマー式ビルディで商品を見てみるピンレスハンマー式
ハンマーとハンマーピンが一体化されている方式です。打撃パワーが直接アンビルに伝わるため効率が良く、小型軽量でも高トルクを得ることができます。
参考 ピンレスハンマー式ビルディで商品を見てみるVハンマー式
ハンマーが回転しながら前後に動きながら打撃を行います。打撃効率が良く高速で強力な締め付けを行えます。また、小型軽量化を図ることができます。
参考 Vハンマー式ビルディで商品を見てみるツインハンマー式
特殊な形状をした2つのハンマーが、モーターからのパワーをロスなくアンビルに伝えます。効率が良く安定性に優れています。高トルクを得ることができ耐久力もあります。
参考 ツインハンマー式ビルディで商品を見てみるN型クラッチハンマー式
超軽量・低振動・高耐久性を有するクラッチです。株式会社空研が独自に開発したタイプです。
参考 N型クラッチハンマー式ビルディで商品を見てみる付加機能で選ぶ
エアーインパクトレンチには、トルクや取り付け角ドライブといった基本的な項目の他に、より便利に使用するための機能がついている機種があります。ここではそういった付加機能を一覧にまとめてみました。あると便利だなと思う機能を確認してみてください。
機能 | 概要 | 対応機種 |
---|---|---|
軽量 | 軽量設計のエアーインパクトレンチです。長時間の作業での疲労を軽減し、狭所での取り回し性に優れます。 | ≫対応機種一覧 |
ショート型 | ショートボディ仕様になっています。先端部分がトリガーの付近まで絞られているので、狭所での取り回し性に優れます。 | ≫対応機種一覧 |
出力調整 | 出力を切り替えることができます。作業内容に応じた調整が可能です。電動インパクトなどの打撃力切り替えのエアー版です。 | ≫対応機種一覧 |
低騒音 | 環境に配慮した低騒音設計です。 | ≫対応機種一覧 |
低振動 | 振動低減設計により、長時間作業時の疲労を軽減します。 | ≫対応機種一覧 |
サイドハンドル付き | サイドハンドルやグリップで、よりしっかりと本体を保持することができます。 | ≫対応機種一覧 |
ロングアンビル | アンビルが長くなっており、大型バス・トラックのタイヤ交換や、重機・建設機械の整備、といった奥深い作業に最適なタイプです。 | ≫対応機種一覧 |
ショートアンビル | アンビルが短くなっており、狭所での取り回し性に優れたタイプです。 | ≫対応機種一覧 |
コンプレッサーの選び方
エアインパクトレンチの空気消費量を確認してください。コンプレッサーの吐出空気量は実際に使用する空気量より10%以上余裕を持って選定してください。
(例)エアインパクトレンチの空気消費量:300L/min → コンプレッサーの吐出空気量:333L/min以上
あわせて、使用ホース内径も確認してください。メーカー推奨のホース内径よりも小さいホースを使用すると製品本来の締め付けトルクが発揮できなかったり、そもそも動かなかったりすることがあります。
エアー取り入れ口について
カプラやプラグが付属しているかを確認してください。付属していない場合は、エアー取り入れ口のサイズに応じたカプラ・プラグを別途用意する必要があります。

ISO規格表記 Rc(=テーパーめねじ) | 旧JIS規格表記 | サイズ(インチ) |
---|---|---|
Rc1/4 | PT1/4 | 1/4″ |
Rc3/8 | PT3/8 | 3/8″ |
Rc1/2 | PT1/2 | 1/2″ |
Rc3/4 | PT3/4 | 3/4″ |
※NPT1/4といった表記の機種もありますが、これはアメリカ管用の規格のため、PT=NPT間での接続はできません。NPTからPTに変換するアダプタなどを使用すると接続が可能です。
主なメーカー
空研
独自開発、超軽量・低振動・高耐久性のN型クラッチ
ワンドッグ型オイルバス式インパクトレンチ KW-L17Gはオイルバス式クラッチで耐久性抜群。コンクリートパイル、ヒューム管、ポール等の成型型枠の脱着作業に最適。
ベッセル
エアーモーターでぐいぐい締まる
エアーインパクトレンチ (超軽量Vシリーズ) GT-1600VPはV型ハンマー方式で小型・軽量・ハイパワー。メンテナンスも容易。
トネ
超軽量・超小型・ハイパワー
エアーインパクトレンチ(ショートタイプ)AI4201は小型ながら、1回の打撃力を大きくしたビックハンマー機構によりハイパワーを実現。軽量と回転継手で取り回しやすく、作業性も向上、長時間の使用での作業負担を軽減。
KTC
薄型ヘッドで狭い場所での作業に最適
アングルエアーインパクトレンチ(コンポジットタイプ)JAP491はインパクトレンチのハイパワーとエアラチェットのコンパクトさを両立。アルミハンマケースとコンポジット素材(特殊強化樹脂)の採用により軽量化を実現。
99N.mまでのエアーインパクトレンチ
それでは、エアーインパクトレンチのおすすめ機種を、トルク別にご紹介していきます。まずは、99N.mまでのエアーインパクトレンチおすすめ機種です。
このクラスは、小型やコンパクトの機種になります。メインにはトルクのあるエアーインパクトレンチを持って、そのサブ機として運用するのもいいかもしれませんね。
KTC 9.5sq エアーインパクトレンチ JAP130
100~399N.mまでのエアーインパクトレンチ
こちらは、100~399N.mまでのエアーインパクトレンチおすすめ機種です。
このクラスも、エアーインパクトレンチの中では小型になります。
空研 12mm エアーインパクトレンチ [9.5sq] KW-12MP
藤原産業 SK11 エアーインパクトレンチ 12.7sq SIW-1600EX
400~699N.mまでのエアーインパクトレンチ
こちらは、400~699N.mまでのエアーインパクトレンチおすすめ機種です。
この辺りのクラスから、エアーインパクトレンチの主流になっていきます。
KTC 12.7sq エアーインパクトレンチ(コンポジットタイプ) JAP451
藤原産業 SK11 超軽量エアインパクトレンチ 12.7sq SIW-1600HG
SP インパクトレンチ12.7mm角 SP1140EX
乗用車のタイヤ交換作業などの自動車整備や、車両の解体作業に最適です。持ちやすく滑らないラバーグリップを装備しています。タフで耐久性抜群のツインハンマーです。片手操作できるワンプッシュ式リバースボタンを採用しています。
≫19Sq(570N.m)モデル SP1150EXもあります。
トネ エアーインパクトレンチ AI4161
700~999N.mまでのエアーインパクトレンチ
こちらは、700~999N.mまでのエアーインパクトレンチおすすめ機種です。
【ビルディ一番人気】トネ エアーインパクトレンチ(ショートタイプ) 12.7sq AI4201
KTC 12.7sq エアーインパクトレンチ(コンポジットタイプ) JAP461
トネ 12.7sq エアーインパクトレンチ AI4220
1,000~1,499N.mまでのエアーインパクトレンチ
こちらは、1,000~1,499N.mまでのエアーインパクトレンチおすすめ機種です。
空研 エアーインパクトレンチ KW-2800PA
SI インパクトレンチ SI-1550T-ULTRA
エスピーエアー(SP) 25.4mm角エアインパクトレンチ SP380DX
1,500~1,999N.mまでのエアーインパクトレンチ
こちらは、1,500~1,999N.mまでのエアーインパクトレンチおすすめ機種です。
ベッセル エアーインパクトレンチ GT-S32RW
KTC 19.0sq エアーインパクトレンチ(コンポジットタイプ) JAP651
2,000N.m以上のエアーインパクトレンチ
こちらは、2,000N.m以上のエアーインパクトレンチおすすめ機種です。
ベッセル 軽量エアーインパクトレンチ GTS55R
空研 エアーインパクトレンチ KW-4500P
トネ エアーインパクトレンチ(ストレートタイプ) AIS8500L
おわりに
ここまでご覧いただき、ありがとうございました。エアーインパクトレンチの特長・選び方とおすすめ機種、いかがでしたでしょうか。皆さまの機種選びのお役に立てば幸いです。またご質問などもお待ちしております! お気軽にお問い合わせください。
・トラスコ中山株式会社(2014)『知っておきたいプロツールの基礎知識「COCOMITE vol.2 」』 p.454 佐川印刷株式会社
【参考サイト】・京都機械工具株式会社「動力工具エアツール類」,KTC(2017年12月08日閲覧)
・株式会社 東洋空機製作所「インパクトレンチ」,TOSEI(2017年12月08日閲覧)
・信濃機販株式会社「インパクトレンチ」,信濃機販株式会社(2017年12月08日閲覧)
・TONE株式会社「製品情報」,TONE(2017年12月08日閲覧)
・株式会社空研「インパクトレンチ」,株式会社空研(2017年12月08日閲覧)