アスベスト規制強化で特別教育が必須に

調査・分析を行うものは講習を受けなければならなくなる

調査が不十分なまま解体等工事が行われている

ケン・島津

建築物や石綿含有建材に関する十分な知識のない者が調査を行っていたり、調査方法に関する認識が不足していたり、調査が不十分なまま解体等工事が行われているのが現状だ。
現時点では誰でも調査を行うことができて、調査方法やその範囲も法令上明確になっていないのよね。

リナ

ケン・島津

一応、平成30年10月に「建築物石綿含有建材調査者講習登録規程」というものが定められたが、修了した者は平成31年3月末現在で1,275名にとどまっているようだ。
義務化されていないのであれば、忙しい中、わざわざ受けようと思わないですよね。

ユージ

ケン・島津

そこで事前調査方法の具体化や、調査・分析を行う者に対する講習が検討されている。

事前調査の方法の具体化

  • 石綿則において、事前調査については、必ず現地調査を行わなければならないこととすること(石綿等の製造、使用等が禁止された平成18年9月1日以降に着工した建築物については、その事実を設計図書等で確認することで足りること)。
  • 石綿則において、上記①の事前調査については、外観からでは目視で直接確認できない部分を含め、解体・改修工事に関わるすべての部位を調査しなければならないこととすること。
  • 上記の石綿則の見直しに併せて、以下a~dのとおり運用上の考え方を示すとともに、以下eの対応を行うこと。
    • a.ねじを外す等建材を全く損傷させることのない方法で解体等を行う場合は、事前調査を行う必要はないこと。
    • b.工事着工後に調査が必要な建材が見つかった場合は、再度調査を行う必要があること。
    • c.調査において、同一と考えられる材料の範囲について、同一ロットのものなどを例示するとともに、例えば、表面仕上げが同一色であることを以て同一と考えられる材料の範囲であると判断せず、天井板であれば点検口から裏面を確認するなどの客観的かつ合理的な判断方法を示すこと。
    • d.石綿を含有する可能性のある建材について石綿含有なしと判断する方法としては、分析による方法のほか、①当該建材について商品を特定し、かつ、②当該商品についてメーカー証明・情報と照合する方法によること。
    • e.分析のための試料採取に当たっては、建材にムラがあることを考慮して、同一と考えられる建材の範囲を特定することとするが、当該建材の具体的な試料採取箇所数については、別途専門家による検討を行うこと。

分析を行う者の要件とする講習の内容

鉱物・建材等に関する基礎的な知識

  • 石綿等に関する基礎知識
  • 建材に含まれる材料の性質
  • 建材の組成等

分析方法の原理と分析機器の取り扱い方法(座学)

  • 偏光顕微鏡を用いる分析方法の原理
  • 偏光顕微鏡の操作
  • 位相差顕微鏡・X線回折装置を用いる分析方法の原理
  • 位相差顕微鏡の操作及びX線回折装置の操作

分析機器ごとの具体的な分析方法(実習)

  • 偏光顕微鏡による定性分析方法
  • 偏光顕微鏡による定量分析方法
  • 位相差顕微鏡・X線回折装置による定性分析方法
  • 位相差顕微鏡・X線回折装置による定量分析方法

一定期間保管しなければならない情報リスト

ケン・島津

調査結果の記録の作成も義務づけられているが、保存期限が規定されていないことも問題視されている。
今の法律だと「記録してたんすけど、破棄しちゃいました。」みたいなことが言えるんですね・・・

ユージ

リナ

下記内容については一定期間保存しなければならないこととなりそうよ。
  • 現地調査等の結果(石綿含有建材の使用箇所を特定できる情報(写真等))
  • 分析結果(石綿含有の有無)や有りとみなしたことを含む

    必要に応じて図面によるものとする。

  • 調査方法および調査箇所
  • 石綿を含有する可能性のある建材について、石綿含有なしと判断した場合は、その判断根拠とそれに対応する同一建材範囲。具体的には、分析によらない場合は、①特定した商品名等(記載または表示の写真など)、および②当該商品等についてメーカーが非含有を証明した書面。

    分析を行った場合は、試料採取箇所の特定できる情報(写真・図面に記載等)を含む。

  • 調査を行った者の氏名及び要件を満たすことを証明する書類
  • 調査の範囲(改修等の場合に調査範囲と作業範囲との一致状況を特定できる情報など)
  • その他必要な情報(調査年月日、事業場(対象物件)の名称、建築物の種別等)
  • 分析結果(石綿無しの場合の判定基準とした含有率(0.1%以下であること)、対象の石綿の種類(6種類であること)を含む)(★)
  • 分析方法(★)
  • 分析を行った者の氏名及び要件を満たすことを証明する書類(★)
  • その他必要な情報(分析年月日、分析結果と試料採取箇所の対応状況の分かる情報等)(★)

※★は分析を行った場合に限る

基準に該当する工事は石綿の有無にかかわらず届出が必要になる

必要な届出を行わないまま工事が行われた例も

ケン・島津

石綿が吹き付けられている建築物を除去する時は作業開始の14日前まで、石綿を含む保温材などを除去する時は作業開始前までに労基署に届出を行うことが義務づけられているが、必要な届出を行わないまま工事が行われた例が多数確認されている。
しかも、解体・改修工事は工事が終了してしまうと建築物がなくなってしまったり、改修前の建材がなくなってしまうから、届出が必要な工事だったのか、措置が適切に行われたのかどうかを確認するのは難しいのよ。

リナ

ユージ

証拠がなくなってしまうんですね。

ケン・島津

行政が事前に工事を把握し、必要な指導が行えるよう、これまでの届出に加えて、以下の基準に該当する工事は石綿の有無にかかわらず、あらかじめ労基署に届け出なければならないようになりそうだ。
一戸建て住宅も含め解体工事の大部分、同規模の改修工事も対象になりそうよ。

リナ

届出が必要な工事の基準

  • 解体工事部分の床面積の合計が80m2以上の建築物の解体工事
  • 請負金額が100万円以上である建築物の改修工事

※解体工事又は改修工事を、同一の事業者が2以上の契約に分割して請け負う場合は、これを1の契約で請け負ったものとみなして適用すること。

※材料費も含めた工事全体の請負金額とすること。

※石綿含有建材がない場合の延べ床面積80m2の2階建て木造住宅の標準的な解体費用。

届出事項

工事に関する基本情報

  • 工事に関する基本情報
  • 解体又は改修工事を実施する事業者の名称、住所、電話番号
  • 解体又は改修工事の作業場所の住所
  • 解体又は改修を行う建築物の構造の概要(耐火建築物、準耐火建築物の該当の有無を含む)
  • 解体又は改修を行う建築物の新築工事の着工年月日
  • 解体又は改修を行う建築物の過去の改修工事の有無及び当該改修工事の着工年月日
  • 解体又は改修工事の名称及び内容
  • 解体工事の床面積又は改修工事の請負金額
  • 解体又は改修工事における石綿の除去等に係る作業の期間
  • 石綿の除去等に係る作業の石綿作業主任者の氏名

※同一工事の仕事を複数の請負事業者に行わせている場合は、元請事業者の名称を記載するとともに、当該工事に関わる全ての関係請負事業者の名称を添付すること

事前調査に関する情報

  • 事前調査の実施年月日
  • 事前調査を行った者の氏名及び要件を満たすことを証明する書類
  • 分析を行った者の氏名及び要件を満たすことを証明する書類(分析を行った場合に限る)

事前調査の結果及び予定する石綿の除去等に係る措置の内容

  • 建材ごとの石綿含有の有無、判断根拠、作業の種類(レベル1及び2の建材で石綿を含有する場合に限る)、破砕・切断等の有無、措置の内容

石綿の除去が完了したことを確認しなければ、隔離を解いてはならなくなる

石綿を取り残したまま隔離を解かれた事案が報告されている

ケン・島津

建築物に吹き付けられている石綿の除去を行う場合、隔離、負圧の維持・点検、漏えいの点検、隔離解除前の除去した石綿の処理及び除去箇所の湿潤化等が義務づけられているが、石綿を取り残したまま隔離を解かれた事案が報告されている。
また、石綿が隔離の外に漏えいした事案も報告されているわ。

リナ

ユージ

自分の家の近くでそんな工事が行われていると考えると怖いですね・・・。
グローブバック工法は隔離と同等以上の効果を有する措置に当たるが、グローブバック工法は法令上明確になっておらず、独自にグローブバックを作成して作業を行うような事例もあるらしい。

ケン・島津

グローブバッグによるアスベスト除去

出典:グローブバッグによるアスベスト除去 (株)ティーシージャパン

ケン・島津

隔離を解く際には、石綿の除去が完了したことを確認しなければ隔離を解いてはならないこととすることになりそうだ。
当たり前のような気がしますが、徹底されていないんですねぇ

ユージ

ケン・島津

さらに、以下のような措置が求められることとなりそうだぞ。
  • 石綿作業主任者への能力向上のための研修等により、集じん機・排気装置の点検等の徹底を図ること。
  • 作業中にダクト等に衝突しないよう、また、衝突した場合は応急措置を行うよう、注意事項等を示すこと。
  • 労働者への特別教育において、洗身室の使用方法についても十分教育するよう教材等の充実を図ること。
  • 負圧隔離の漏れの有無の確認方法として、目視やスモークテスターを使用する方法のほか、負圧隔離に煙を充満させ漏れた煙を見る方法や、触診などの方法も例示に加えること。
  • 吹付材劣化による脱落などにより、既に機材等に落下・付着している石綿について、除去等の作業開始前に清掃作業や機材の搬出等を行うにあたって石綿の飛散持ち出し等の防止することについて、注意事項等を示すこと。
  • 除去建材崩落等の際の作業方法について留意事項等を示すこと。
グローブバッグ工法については、以下のような措置が求められることになりそうよ。

リナ

  • グローブバッグにより作業を行おうとする箇所を覆い、密閉すること
  • 作業開始前にスモークテスト又はそれと同等の方法で密閉の適否を点検し、漏れがあった場合はふさぐこと
  • 除去前に石綿含有保温材等を湿潤化すること
  • グローブバッグの脱落等が生じた場合は、素早く湿潤するとともに、真空掃除機で清掃すること
  • 除去作業後、グローブバッグを開放する前に、石綿含有保温材等を除去した部分を湿潤化すること(粉じん飛散防止処理剤の噴霧等)
  • グローブバッグから工具等を持ち出す際には、あらかじめ付着物を除去し、又は梱包して廃棄すること
  • 除去作業後、グローブバッグを取り外す前に内部の空気を、HEPAフィルタを通して抜くこと

レベル3建材の除去作業においても隔離措置が必要になる

レベル3建材でも高濃度の石綿の飛散が確認されている

ケン・島津

現状、いわゆるレベル3建材については、石綿の飛散の程度が比較的低いことから、切断等を行う場合にも隔離等の措置は求められていない。
だけど、レベル3建材のうち、ケイカル板(ケイ酸カルシウム板1種)については、破砕した場合、比較的高濃度の石綿の飛散が確認されているの。

リナ

アスベスト含有ケイ酸カルシウム板(鉄骨造の耐火被覆)

アスベスト含有ケイ酸カルシウム板(鉄骨造の耐火被覆)

ユージ

えええ!やばいじゃないですか!
解体方法や劣化状況によっては発じん量はさらに増加する恐れがある。しかし、湿潤化に加えて、隔離を行うことにより、外部への飛散は抑制できるとの測定結果が環境省の調査において得られたそうだ。

ケン・島津

ユージ

ということは、レベル3建材についても隔離等の措置が求められることになるということですね?
その通り!

ケン・島津

リナ

具体的には、レベル3建材は破砕を行わずに除去することを原則とするとともに、石綿等を含有するケイカル板(ケイ酸カルシウム板第1種)をやむを得ず破砕する場合は、湿潤化に加えて、作業場所の周囲を隔離しなければならないこととすることとなりそうよ。
うっ、めんどくせ・・・

ユージ

ケン・島津

しかし、負圧までは求められておらず、養生シート等で囲うような措置を想定しているようだから、そこまで大変ではないだろう。
さらに以下のような措置が求められることになりそうよ。

リナ

  • 堆積粉じんの再飛散を防止するため、HEPAフィルタ付き真空掃除機などによる清掃作業とともに、清掃後の堆積粉じんの除去の確認を指導すること。
  • 除去作業を行う作業場所で石綿の除去以外の作業を行う場合、呼吸用保護具(取替え式防じんマスク又は使い捨て防じんマスク)の着用とともに、予防的観点から、その他の解体等の作業場においても、労働者に呼吸用保護具の着用を徹底すること。

作業実施状況等を記録しなければならなくなる

飛散・ばく露防止措置が適切に講じられていない

ケン・島津

石綿の除去作業を行う場合は、隔離・湿潤化などが義務付けられているが、飛散・ばく露措置が適切に講じられないまま、作業が行われた事案が多数報告されている。
工事が終了してしまうと建築物がなくなってしまったり、改修前の建材がなくなってしまうから、飛散・ばく露措置が適切に行われたのかどうかを確認するのは難しいのよ。

リナ

バレないから、適切な措置を行うよりもさっさと作業を終わらせてしまおうと思ってしまうんですかね・・・

ユージ

ただ、床面積80m2以上の建築物の解体工事は年間で20万件以上もあるから、行政が網羅的に関連する工事を事前に指導することは不可能なのよ。

リナ

ケン・島津

そこで下記項目については一定期間保存することが義務付けられることになりそうだ。

一定期間保管しなければならない情報リスト

作業の実施状況などの記録

※現場ごとに、次の事項について日時・撮影場所・各措置の内容が分かる形で写真等により記録しなければならないこと。なお、作業の記録内容については、現場での過度な負担とならないように留意が必要であること。
  • 事前調査結果の概要に関する掲示、立入禁止措置、喫煙などの禁止、有害性等に関する掲示
  • ※掲示・表示の写真など
  • 隔離などの措置
  • ※セキュリティゾーンや集じん・排気措置の写真、点検状況・結果(計測機器のメーター等)、隔離解除前の石綿などの取り残しの有無がわかる写真データなど。
  • 作業の順序ごとの作業状況(湿潤化、保護具を含む)
  • ※作業計画に記載されている作業の順序ごとに、作業の状況、湿潤化の手段(散水か飛散防止剤使用かなど)や湿潤化の状況、作業中の保護具など(呼吸用保護具・作業衣・保護衣)の着用状況が分かる写真・データなど ※同様な作業を行う場合は、作業する階や部屋が変わるごとに記録
  • 石綿含有建材の運搬・貯蔵時等の確実な包装等
  • ※包装(荷姿)の写真など
  • 作業場外に持ち出す際の器具・保護具などの付着物の除去または梱包
  • ※付着物の除去状況の写真、または梱包した場面の写真など
  • 従事労働者の記録
  • ※作業計画に記載されている石綿を取り扱う作業の順序ごとに、当該作業に従事した労働者及び周辺労働者の氏名と当該作業日を記録しなければならないこと。

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