【監督は見た】マンションリフォーム共用部・専有部にまつわる5つのトラブル事例

マンションリフォームのポイント

【ゲスト寄稿】
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マンションリフォームと戸建てリフォームの違い

ビルディマガジン読者の皆さん、こんにちは!ベンガルです。今日はマンションのリフォームについて、現場監督として数多くのマンションリフォームに携わってきた私ベンガルがわかりやすく解説します。

戸建とマンションとで比較すると、一体何が違うのでしょうか?

まずマンションのリフォーム工事に入る前に、必ず考えなければいけないのが以下2つのポイントです。

  1. 「共用部」と「専有部」があり、区分所有者である入居者がリフォームできるのは「専有部」だけ。「共用部」は入居者のリフォームでは原則触ることができない。
  2. マンションのルール「管理規約」があり、マンション住人で組織する「管理組合」がある。

1.何が触ることができない「共用部」かをきちんと理解する必要があります。

2.「管理規約」で専有部をリフォームする際のルールが規定(専有部リフォーム細則)され、そのルールに従ってリフォームを計画し、かつ「管理組合」に「こんなリフォームします」と申請が必要です。

そんな「共用部」「専有部」や「管理規約」「管理組合」などの観点からマンションリフォームのポイントを述べていきたいと思います。

マンションの共用部と専有部

共用部とは

マンションの共用部としては、エンランス、駐車場、エレベーター、外部廊下、階段、屋上…などは分かりやすいですよね。しかし、お部屋内のリフォームを考える場合、お部屋に絡む共用部とは以下の様なものがあります。

柱、梁、壁、床などの躯体

マンションは主にコンクリートでつくられています。(RC造もしくはSRC造)壁はALC(軽量気泡コンクリート)、ブロック、乾式遮音耐火間仕切(タワーマンションで多く採用されている。)で構成されている場合もあります。

躯体はマンションの構造耐力上重要な構造躯体と、構造上は重要でない非構造部材とに分かれます。柱、梁、床は構造躯体(マンションの構造耐力計算上必要な躯体)です。また、壁は耐力壁(耐震壁)が構造躯体であり、マンションの耐力に影響しない壁は非構造部材です。

壁について、「マンションの壁の中で、一体どの部位が構造躯体なの?」と思われるかもしれません。それについて説明する前に、一旦わき道にそれます。マンションの構造形式は「ラーメン構造」と「壁式構造」に分類されます。「ラーメン構造」は柱や梁で構成された構造で、「壁式構造」は柱や梁がなく、壁のみで構成された構造です。「壁式構造」は通常3階建のような低層のマンションに採用されるので、中高層のマンションは「ラーメン構造」と思っていただいて構いません。

話を戻すと、「ラーメン構造」のマンションでは、一般的にコンクリートで出来た戸境壁(隣戸間の壁)は構造躯体です。一方、外廊下あるいはバルコニーに面する壁は非構造部材です。 「壁式構造」のマンションでは壁は全て耐力壁となり、構造躯体です。室内にも構造壁を設けている場合がかなりの割合でありますので、注意が必要です。(構造的にリフォームで撤去できない壁となります。)

また、コンクリートではなく、ALC(軽量気泡コンクリート)、ブロック、乾式遮音耐火間仕切で構成された壁は非構造部材です。しかし、非構造部とはいえ、遮音、耐火、防水などの観点からは重要な機能を果たす部材なのです。

構造躯体 非構造部材
コンクリートでできた柱、梁、床、耐力壁
  • 「ラーメン構造」では外廊下やバルコニーに面する壁
  • ALC、ブロック、乾式遮音耐火間仕切で構成された壁

上下階を貫通している竪排水管

竪排水管
竪排水管(筆者撮影)

各階、各室の排水が集まって、上下階を貫通している竪排水管を通して下階へ流れてゆきます。室内でキッチンなどの水回り設備と竪排水管をつなぐ「横引き管」は専有部に属します。ただ、築古(1970年代頃)のマンションでは、横引き管が床を貫通して下階の部屋の天井に配管される場合があり、その場合は横引き管も共用部扱いとなることがあります。

上下階を貫通しているダクトスペース

現在のマンションでは換気ダクトはその部屋に面する外壁に排気出口を設けています。築古(1970年代頃)のマンションでは部屋内に「ダクトスペース」を設け、そこに排気している場合があります。ダクトスペースは上下階を貫通していて、屋上で外気に排気しています。

排気口
外壁排気口(筆者撮影)
換気ダクト
天井裏換気ダクト(筆者撮影)

玄関ドア、サッシ、ガラス

玄関ドアやサッシは入居者がリフォームで交換することはできません。ガラスも共用部ですが、管理組合に届け出をすれば入居者が自己負担で交換できる場合が多いです。

自動火災報知設備の感知器やインターホンなどの防災設備

部屋内にある感知器やインターホンは専有部なのですが、火災時にはマンション全体へ発報したり、管理事務室または外部の警備会社等へ通報する機能があり、共用部として扱われます。つまり、入居者が勝手に撤去や機能を満たさないものに交換(電池式の火災警報器に交換など)はできません。ただ、移設や増設は可能です。

インターホン
インターホン(筆者撮影)
感知器
感知器(筆者撮影)

古くなったインターホンの交換は管理組合主導でマンション全戸一斉に行われることが一般的です。ただし、築古のマンションでインターホンが防災設備でなく、単に玄関先のインターホンとつながっているだけのタイプであれば、入居者が独自に交換することは可能です。

バルコニー、ルーフバルコニー、玄関ポーチ、専用庭など

これらは、「専用使用権のある共用部」です。つまり、共用部分でありながら、特定の区分所有者だけが専ら使うことができて、その他の者はつかうことができない部分です。よって、共用部なのでバルコニーに物置を固定したり、ルーフバルコニーの壁に水栓を設置したり、専用庭に木を植えたり等のリフォームはできません

専有部とは

前述した共用部以外の、躯体より内側にある室内の内装部分と設備が専有部です。専有部は入居者がリフォームできる部位です。また、屋外にあっても給湯器は専有部として入居者が交換できます。

内装やキッチンなどの水回り設備はもちろん、共用部以外の室内にある給水管・給湯管・ガス管・排水管も専有部として入居者が交換可能です。

給水給湯更新
給水給湯更新(筆者撮影)
大工工事
内装大工工事(筆者撮影)

しかしながら、リフォーム可能とはいえ、前述の「管理規約」(専有部リフォーム細則)で決まっているルールに従う必要があり、入居者が全く自由に・規制なくリフォームできる訳ではありませんので、必ず管理規約の確認は必要です。

共用部の例外

マンションリフォームでは共用部は原則、触ることができない部位です。しかし、例外もあります。前述のガラス交換、玄関ドアの「内側」の塗装・シート張りは可能です。

また、外部から設備管(追い炊き管等)を新たに通したい・新しくエアコンを設置できるように冷媒管を通したいという要望がある場合、外廊下やバルコニーに面する壁(非構造部材)に穴を開ける必要があります。(コンクリートに穴を開けることをコア抜きといいます。)非構造部材の場合のコア抜きは、管理組合に申請して承認が下りれば可能となる場合があります。

コア抜き
コア抜き作業(筆者撮影)
コア抜き穴
コア抜き穴(筆者撮影)

同様にブロック造の壁は非構造部材なので、管理組合に申請して承認が下りればコア抜きや撤去が可能となる場合があります。

ブロック
ブロック造の壁(筆者撮影)

また、構造躯体であるコンクリートの床の上に、床のレベル調整のためシンダーコンクリートを増し打ちしている場合があります。このシンダーコンクリート(強度を必要としない場所に打つ軽量コンクリート)は構造的には撤去は可能です。しかし、コンクリートを撤去するにはものすごい騒音・振動が出ますので、他の入居者から多数のクレームがはいります。事前注意喚起と相当の覚悟(?)が必要です。

共用部がらみのリフォームトラブル事例

1.壁式構造の間取り変更

マンションの大幅な間取り変更工事を受注。いざ着工し、間仕切り壁を撤去していると、一部の間仕切壁がコンクリートになっている! あわてて構造図を見てみると、なんと壊そうとしているその壁は耐力壁でした。当然撤去できないので、計画した間取り変更プランは実現不可能です。もちろんお客様はご納得されず大変なトラブルになってしまいました。

この場合は、建築士さんの構造図確認漏れが原因ということになります。リフォーム計画を立てる前には、構造図をはじめとする設計図書(竣工図面)を参照するのは基本中の基本です。

2.ルーフバルコニーに水栓設置

ルーフバルコニーで趣味の植木鉢を置いているお客様の事例です。ルーフバルコニーに面する外壁に散水用の水栓を設置したいという事で、使っていないエアコンスリーブの穴から給水管を通し、壁に水栓を固定。排水はルーフバルコニーに垂れ流しとしました。

これは、2つの点で間違いです。

  • 管理組合の許可なく共用部である壁に水栓を固定した。
  • 雑排水をルーフバルコニーに垂れ流した。

共用部には入居者が勝手に触れないのは既に述べた通りです。また、雨水と雑排水は、自治体ごと、地域ごとに分流式か合流式かが決まっています。

分流式の場合は、水栓の排水の垂れ流しは出来ず、排水を受けて宅内に戻し、雑排水の排水管につなげなくてはなりません。分流式の場合が多いので、リフォームの計画では分流(別々に集水)することが原則になっています。

合流式の場合は、雨水雑排水が合流可能です。

3.下階への排水管の老朽化

築古のマンションで、一部の横引き管が床を貫通して下階の部屋の天井に配管されていました。大幅なリフォームをしたところ、お風呂、洗面、洗濯機などの水回りを同時排水したところ洗濯機排水溝から排水が逆流! よくよく調査すると、下階の横引き管が老朽化で錆により閉塞していて、その錆が上階から取れませんでした。しかし、下階つまり他人のお部屋の天井裏にあるので、すぐにはどうしようもない。健全な排水管に交換するまで同時排水しないよう生活を注意してもらうこととなりました。

4.追い炊き管を新設

「お風呂に追い炊き機能を新しく設けたい」というリフォームのご要望は多数あります。その場合、追い炊き管が追加配管となるので、外部にある給湯器から室内への飛び込み口を増やすために、給湯器が面する壁に穴を開けなくてはなりません。当然共用部なので、勝手に穴を開けると後からトラブルになるケースがあります。

5.乾式遮音耐火間仕切に穴開け

タワーマンションでよく採用されている戸境壁の乾式遮音耐火間仕切。乾式遮音耐火間仕切の構成は軽量鉄骨+グラスウール+プラスターボードです。このお部屋の間取り変更のリフォームを行いました。その際に、電気の配線を通すために、電気屋さんがこのプラスターボードに穴を開けてしまったのです。

表面が内壁材や下地材として使われるプラスターボードなので、電気屋さんも通常の間仕切りと思ってしまったケースです。マンション工事に慣れていない方であれば起こりうるパターンなので要注意です。乾式遮音耐火間仕切は共用部なので、もちろんこれはNGです。

おわりに

以上見てきたように、マンションリフォームは、まず共用部と専有部の違いを理解する事からスタートします。お客様の要望によりリフォームプランが共用部にからむ場合、プランを変更するのか、管理組合に承認を得る手続きをするのか…など悩む事は結構多いです。少しでも分からないことは自己判断で進めず必ず確認を取りましょう。

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