溶接棒(被覆アーク溶接棒)の選び方【溶接の基礎知識】

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↓被覆アーク溶接については下記リンク先の記事で詳しく解説しています。

被覆アーク溶接の特徴(メリット・デメリット)と電圧別のオススメ機種

溶接棒の選び方

溶接棒を選ぶ際に気をつけるポイントは下の2点だけです。

この2点を確認後、溶接の環境に合わせて被覆タイプなどで絞り込めばOKです。

  1. 母材(溶接する金属)の材質、板厚により溶接棒の種類を決める。
  2. 使用する溶接機の能力と溶接する板厚によって太さを決める

※溶接棒が細いと何度も溶接して、盛る必要がありますが、太すぎると熱を加える時間が長くなり母材が溶けて穴が開くなどの問題が出てきてしまいます。大は小を兼ねるというものではないので、最適な太さのものを選ぶようにしましょう。

まずは溶接棒の種類ですが、母材(溶接する金属)の材質によって、下記のような種類の溶接棒が販売されています。

軟鋼低電圧用溶接棒

軟鋼低電圧用溶接棒

薄い鉄板の溶接に使用します。家庭用100V電源でも使用可能です。全姿勢で溶接が可能です。

一般軟鋼用溶接棒

鉄の薄板から厚板の溶接まで幅広く使用できます。1度溶接してから再度はじめた時の溶接がしやすくなっています。ビードの伸びもよく、全姿勢で溶接が可能です。

ステンレス用溶接棒

ステンレス用溶接棒

基本的には

ステンレス同士を溶接する場合:JIS Z3221 ES308-16規格品(神戸製鋼のNC-38など)

ステンレスとステンレス以外の鉄などを溶接する場合:JIS Z3221 ES309-16規格品(神戸製鋼のNC-39など)

を使用します。

鋳物用溶接棒

鋳物用溶接棒

鋳鉄の補修溶接に使用します。溶接姿勢の下向溶接のみとなります。

溶接棒の太さと電流の関係

続いて、溶接棒の太さについてです。

溶接棒が太くなれば太くなるほど大きい電流が必要になりますので、もし溶接機を既に持っている場合はその溶接機の能力(最大電流値)によって使用可能な溶接棒の太さ&最大板厚が決まることになります。

溶接棒線径と母材板厚及び電流の関係(下向)
溶接棒線径適正電流参考使用可能材厚
1.2mm以下薄すぎて難しい
1.4mm1.4×50-30=40A1.2mm~1.4mm
1.6mm1.6×50-30=50A1.4mm~1.6mm
2.0mm2.0×50-30=70A1.6mm~2.0mm
2.6mm2.6×50-30=100A2.2mm~2.6mm
3.2mm3.0×50-30=120A2.8mm~3.2mm
4.0mm4.0×50-30=170A3.2mm~4.0mm

注意:一般に立向姿勢では下向姿勢の20~30%減、上向姿勢では10~20%減の比較的弱めの電流値をとります。

そもそも溶接棒とは?どういう構造なの?

被覆タイプの説明に移る前に、そもそも溶接棒はどういう構造なのかという話をさせてください。

鋼の心線にフラックス(被覆剤)を塗り固めたものが溶接棒(被覆アーク溶接棒)です。

しかし、溶接するなら、ただの金属の棒だけでよさそうですよね?では、なぜフラックスを周りに塗り固めるのでしょうか?

それには下記のような理由があるんです。

  1. アークの集中性と安定性を良くするため
  2. 保護ガスを発生し、大気中から酸素や窒素の侵入を防ぐため
  3. スラグを形成して溶接金属を覆い、ビード外観を綺麗にするため
  4. スラグの融点や粘性等を適切なものに調節し、様々な姿勢での溶接を容易するため
  5. 溶接金属の酸化を防ぎ、溶接の質を良くするため
  6. 溶接金属に適した合金を添加し、必要とする特別な性質を与えるため

正直、専門的すぎて分かりにくい部分もありますが、一言でいうと

「ただの鋼の棒で溶接するとめちゃくちゃむずいし、汚くなる。だから、フラックスを塗り固めてるんだよ。」

ということですね。簡単にまとめすぎですかね?(笑)

スラグとは

上図の緑色の部分のことです。フラックスにはケイ素(Si)やマンガン(Mn)が脱酸剤として含まれていますが、溶接金属中の酸素と反応してSiO2やMnOとなり、溶接部の表面に浮上します。この表面部分がスラグと呼ばれています。溶接金属内に酸素や窒素が入り込まないようにしたり、外観をよくする効果があります。

被覆タイプの種類

一口に溶接棒と言ってもフラックス(被覆材)の種類によってイルミナイト系、ライムチタニヤ系、高酸化チタン系、低水素系と大きく4つに分類されます。それぞれに特徴がありますので、詳しく見ていきましょう!

イルミナイト系 (JIS Z 3211 E4319)

イルミナイト

旧JIS規格はJIS Z 3211 E4319になります。フラックスに約30%のイルミナイトという鉱物を含んだ溶接棒で、日本で開発され広く使われています。アークが強く、集中性・安定性に優れることから、様々な姿勢で安定した溶込みを得られます。そのため、技量試験やコンクールなどでよく使用される種類の溶接棒です。

神戸製鋼のB-10・B-14・B-17や日鐵住金のG-200G-300A-200などがこれに当たります。

ライムチタニヤ系 (JIS Z 3211 E4303)

ライムチタニヤ系

フラックスに高酸化チタン(titan)を約30%、炭酸石灰(lime)などの塩基性物質を約20%含んだ溶接棒です。難吸湿タイプなので、吸湿しやすい環境下でも優れた再アーク性を発揮します。スラグの焼付きも少なく、スラグ剥離性が抜群で美しいビードを形成します。

神戸製鋼のZ-44(ゼロード44)、日鐵住金のNS-03TやNS-03Hiなどがこれに当たります。

高酸化チタン系 (JIS Z 3211 E4313)

RB-26

フラックスに酸化チタンを約35%含んだ溶接棒です。スパッタは少なくスラグ被り・剥離が良好です。溶け込みが浅く、美しい光沢のあるビードが得られるので外観を重視する溶接に適しています

神戸製鋼のB-33、RB-26や日鐵住金のS-13Zなどがこれに当たります。

低水素系 (JIS Z 3211 E4316)

低水素系

フラックスに有機物を含まず、高温乾燥により、ブローホールの原因となる溶接金属中の水素量を低く抑えることができます。厚板や拘束の大きな溶接に適しています。

神戸製鋼のLB-26・LB-47・LB-52Uや日鐵住金のS-16・L-55などがこれに当たります。

ブローホールとは

ブローホールは溶接金属内で発生したガスもしくは侵入したガスが大気中へ放出されず、溶接金属内に閉じ込められることによって生じる空洞です。ブローホールを防止するには、板材表面のほこりの除去、酸化皮膜の除去などが有効です。

被覆タイプの特徴まとめ

溶接棒メーカーGOOD WELD様のカタログに被覆タイプそれぞれの特徴がわかりやすくまとめられていましたので掲載しておきますね。

被覆タイプの特徴
JIS規格 E4319 E4303 E4313 E4316
被覆タイプ イルミナイト系 ライムチタニヤ系高酸化チタン系 低水素系
溶接性質
耐割れ性
X線性能
耐衝撃性
作業性
溶接姿勢 下向溶接
下向隅肉溶接
立向上進溶接
立向下進溶接
横向き、
上向立向溶接
ビード外観 下向溶接
下向隅肉溶接
立向、
横向溶接
溶け込み
再アーク
スパッタ
スラグ剥離性
溶接速度
薄板溶接

☆:極めて優れている、◎:優れている、◯:普通、△:劣る、-:推薦しない。

溶接姿勢について

溶接姿勢

出典「独立行政法人 産業技術総合研究所」

急に溶接姿勢という言葉出てきて、驚かれた方もいらっしゃるかもしれません。でも、大丈夫です。この図を見てください!

すみません・・・これを見れば溶接姿勢が分かるというくらい、分かりやすい図なのですが、画質が悪いので言葉で補足しておきます(笑)

  • 下向:溶接棒の先端が下を向いている、最も基本的な溶接姿勢です。進行方向は身体から遠ざかる方向です。
  • 立向上進:溶接棒の先端が壁と垂直で、天井方向に進みます。
  • 立向下進:溶接棒の先端が壁と垂直で、床方向に進みます。
  • 上向:溶接棒の先端が天井を向きます。
  • 横向:溶接棒の先端が壁と垂直で、天井・床と平行に進みます。

溶接棒と一緒そろえると便利な別売品

乾燥機
乾燥機

溶接棒が吸湿するとアークが強くなったり、スラグの被りが不安定になるなど溶接の質を低下させます。そのため、使用前に乾燥させることが重要ですが、温度が低いと乾燥が不十分になり、温度が高いとフラックスの分解を招く恐れがあるのでメーカーが推奨する条件をしっかり確認する必要があります。

ビルディで見る

溶接棒ケース
溶接棒ケース

吸湿や雨濡れなどによる溶接棒の性能劣化を防止します。

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溶接棒ホルダー
溶接棒ホルダー

アーク溶接の際に溶接棒をクランプ部で保持する器具。単にホルダーとも呼ばれています。

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以上、溶接棒の選び方についてまとめてみました。いかがでしたでしょうか?何かご不明な点がございましたら、お気軽にコメント欄からご投稿ください。

1 COMMENT

鯵兄

スズキッドの単200v専用のアーク溶接機を購入するのですが、中間ソケット(ジョイントソケット)は16-25では細いんでしょうか?因みに溶接棒は3.2を使用します。

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