目次
軸規格と互換性について
電動工具の取付軸には、六角軸やSDSプラス軸など様々な規格があります。特にハンマードリルやはつりハンマーでは、同じ規格でもサイズの違いがあるなど、かなり複雑なものになっています。
プロの職人さんが本格的に使用するということであれば、同じ軸規格の本体と先端工具を揃えることが基本となります。一方で、一時的な作業やDIYなどで、違う規格の本体と先端工具をアダプターを使ってつなげて使いたいという場面もあるかと思います。
今回の記事では、それぞれの工具ごとに使えるアダプターをまとめてみました。
ハンマードリル・はつりハンマーの場合


まずは、最も複雑なハンマードリル・はつりハンマーを見ていきましょう。
取付軸の規格は3種類あります

ハンマードリル・はつりハンマーの取付軸規格には、六角軸・SDSプラス軸・SDSマックス軸の3種類があります。まずはお手持ちの電動工具本体や先端工具がどの規格かを確認してください。
SDSプラス軸・SDSマックス軸


SDSマックス軸は中・大型のタイプに使われることが多く、頑丈でパワーロスの少ない構造になっています。SDSプラス軸は小型から大型まで幅広く、こちらもパワーロスが少なく最近の主流の規格です。SDSマックス軸もSDSプラス軸も、ボッシュが開発した規格になります。取り付け時は差し込んで回し、噛み合ったところでより深く押し込むだけ、取り外し時はスリーブを引きながら抜き取るだけ、と着脱が容易な点も魅力です。
SDSマックス軸のハンマードリルは、52mmまでのドリルビットが使用できます。一方で、六角軸のハンマードリルは40mmまでのドリルビット対応となっています。
ちなみに、SDSマックス軸は直径18mm、SDSプラス軸は直径10mmですが、六角軸のハンマードリルは対辺13mmのみのラインナップになっています。この軸の太さの差が、穴あけ能力の差とも言えそうです。

六角軸のサイズについては、対辺の長さで規定されています。6.35mmの六角軸であれば、左の画像の対辺部分が6.35mmということになります。
同様に13mm六角軸の場合には、対辺部分が13mmということになります。
軸の種類 | 最大穴あけ能力 | 機種 |
---|---|---|
SDSプラス軸 (直径10mm) |
30mm | マキタ HR3011FC HiKOKI DH30PC2 |
SDSマックス軸 (直径18mm) |
52mm | マキタ HR006GZK マキタ HR5212C HiKOKI DH52ME/DH52MEY |
13mm六角軸 (対辺13mm) |
40mm | 40mm対応六角軸ハンマードリル |
六角軸

六角軸はSDSプラス軸やSDSマックス軸とは違い、同じ軸でも対辺13mm・対辺17mm・対辺21mm・対辺28.5mm・対辺29mm・対辺30mmといったサイズの違いがあります。3種類の中では最も古くからある規格ですが、今でもはつりハンマーでパワー最上位クラスの機種はすべて対辺28.5~30mmの六角軸を採用しています。
ちなみに、SDSプラス軸は直径10mm、SDSマックス軸は直径18mmとなっています。対辺28.5~30mmの六角軸はSDSマックス軸より太さがあるため、より大きな打撃パワーを発揮できるということですね。

六角軸のサイズについては、対辺の長さで規定されています。6.35mmの六角軸であれば、左の画像の対辺部分が6.35mmということになります。
同様に13mm六角軸の場合には、対辺部分が13mmということになります。

21mm六角軸は、SDSマックス軸の18mmよりは太くなっていますが、この軸を使用する工具本体は発売から10年以上経つ比較的古い機種なので、現在のSDSマックス軸最新機種よりはパワーが控えめになっているものと思われます。
軸の種類 | はつり時最大打撃エネルギー(旧基準値) | 機種 |
---|---|---|
SDSプラス軸(直径10mm) | 4J(ケレン) | HiKOKI H25PV |
SDSマックス軸(直径18mm) | 27.5J | マキタ HM002GZK |
17mm六角軸 | 12.5J | HiKOKI H45SR |
21mm六角軸 | 14.2J | マキタ HM1201 |
28.5mm六角軸 (HiKOKI H90SG専用) |
70J | HiKOKI H90SG |
29mm六角軸 (マキタ HM1812専用) |
62J | マキタ HM1812 |
30mm六角軸 | 54.7J | マキタ HM1511 |
六角軸の疑問解決 ~ハンマードリルは13mm?17mm?~
六角軸のハンマードリルは、13mm六角軸のドリルビットを取り付けて穴あけを行います。一方で、ハツリを行う際には17mm六角軸のブルポイントを取り付けて作業を行います。これはどういった仕組みになっているのでしょうか。

実は、ハンマードリル用の13mm六角軸ドリルビットの場合、根元の部分が六角13mmとなっています。この根本の六角部分がハンマードリル内部の回転部にはまることによってビットが回転するとともに打撃を行うようになっています。
一方ブルポイントの場合は、根元部分ではなく根本から離れた部分が六角17mmとなっています。ハンマードリルに取り付けた際に、この六角17mm部分には回転が伝わらないため、打撃のみの動作になります。

上の画像は、ハンマードリルのビット差込部を真正面から撮影したものです。奥の方に見える六角形の部分が回転します。六角13mmのドリルビットを差し込むと、この部分にはまるので回転が伝わります。六角17mmのブルポイントの場合は、ここに差し込まれる部分は六角ではなく丸棒なので、回転が伝わりません。差込部手前の方は、六角13mm、六角17mmどちらも入るサイズになっています。
このような構造になっているため、六角軸ハンマードリルには打撃、打撃+回転といった切り替えスイッチはありません。


六角軸
ここからは、ハンマードリルの取付軸規格ごとに、取り付けられるアダプターを見ていきましょう。
まずは、六角軸です! ・・・といきたいところなのですが、残念ながらハンマードリル・はつりハンマーの六角軸を他の軸に変換できるアダプターは現在発売されていません。六角軸の本体と先端工具はセットで運用する必要があります。
六角軸はサイズも多く、独自の規格などもあるので製品化が難しいのかもしれません。また、パワーが有る機種も多いので、作ったとしても強度的に耐えられないという可能性もありますね。
SDSプラス軸
SDSプラス軸は、比較的よく使われる小型~中型のハンマードリルで主流の軸規格となっています。そのため、様々なアダプターがラインナップされています。
ちなみに2021年現在、SDSプラス軸を採用している電動工具はハンマードリルのみとなっており、SDSプラス軸のはつりハンマーはどのメーカーからも販売されていません。SDSプラス軸では、はつりハンマーに求められるパワーに耐えきれないものと思われます。
SDSプラス軸⇒6.35mm六角軸への変換

ハンマードリルのSDSプラス軸を、インパクトドライバーで使われる6.35mm六角軸に変換できるアダプターです。使用時には、ハンマードリルは回転専用モードにする必要があります。
ハンマードリル用の13mm六角軸や、17~30mmのはつりハンマー用六角軸への変換アダプターはありません。

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SDSプラス軸⇒12.7sq角ドライブへの変換

ハンマードリルのSDSプラス軸を、インパクトレンチで使われる12.7sq角ドライブに変換できるアダプターです。

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SDSプラス軸⇒ドリルチャックへの変換

ハンマードリルのSDSプラス軸を、ドリルドライバーや振動ドリル、電気ドリルで使われるドリルチャックに変換できるアダプターです。
回転専用のタイプと、回転に加えて打撃にも対応するタイプがあります。選定の際にはご注意ください。

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SDSマックス軸
こちらは、SDSマックス軸の変換アダプターになります。
SDSマックス軸⇒SDSプラス軸への変換

ハンマードリルのSDSマックス軸を、SDSプラス軸に変換できるアダプターです。ハンマードリルの3種の軸規格は基本的に互換性がありませんが、唯一互換性があるものがSDSマックス軸→SDSプラス軸になります。

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SDSマックス軸⇒ドリルチャックへの変換

ハンマードリルのSDSマックス軸を、ドリルドライバーや振動ドリル、電気ドリルで使われるドリルチャックに変換できるアダプターです。
ハンマードリルは回転専用モードにする必要があります。

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インパクトドライバーの場合


次は、電動工具の顔とも言えるインパクトドライバーです。こちらも様々なアダプターがラインナップされています。
6.35mm六角軸⇒角ドライブへの変換

インパクトドライバーの6.35mm六角軸を、インパクトレンチで使われる角ドライブに変換できるアダプターです。
インパクトレンチ用のソケットをそのまま使用することができます。角ドライブには、6.3sq・9.5sq・12.7sq・19.0sq・25.4sq・38.1sqといったサイズがありますが、変換アダプターで対応できるサイズは12.7sqまでとなっています。根本はそもそも6.35mmの六角軸ですので、19.0sq以上に変換するには軸の強度が足りないと思われます。

インパクトレンチ用のソケットには、ワンタッチで固定するタイプと、Oリングとピンで固定するタイプがあります。アダプターも同様にワンタッチタイプとOリング・ピン止めタイプがありますので、選定の際にはご注意ください。
アンビル部分にピンを通すための貫通穴が空いているものが、Oリング・ピン止めタイプのアダプターになります。

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6.35mm六角軸⇒ドリルチャックへの変換

インパクトドライバーの6.35mm六角軸を、ドリルドライバーや振動ドリル、電気ドリルで使われるドリルチャックに変換できるアダプターです。

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6.35mm六角軸⇒SDSプラス軸への変換

インパクトドライバーの6.35mm六角軸を、ハンマードリルで使われるSDSプラス軸に変換できるアダプターです。
変換はできますが、根本が6.35mm六角軸のため、SDSプラス軸ドリルを付けてハンマードリル代わりに使うなどの大きな負荷がかかる作業をすると、軸が破損する可能性があります。

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ドリルドライバー・振動ドリル・電気ドリルの場合



六角軸ビット・ドリルの取付
こちらは変換アダプターではありませんが、ドリルドライバーや電気ドリルのドリルチャックには、六角軸のビットやドリルを取り付けて使用することができます。ドリルチャックは汎用性が高いため、軸を変換するアダプターは発売されていないようです。
ドリルチャックは、3本の爪によって軸を固定しています。この爪を開いたり閉じたりすることで、1mm前後の軸から13mmの軸まで、幅広い太さの軸に対応することができます。六角軸のビットを取り付ける際には、ドリルチャックの爪が、軸側面の平たい部分にしっかりと当たるようにして締め付けることで、問題なく固定が可能です。


インパクトレンチの場合


最後は、インパクトレンチです。
角ドライブ⇒6.35mm六角軸への変換

インパクトレンチの角ドライブを、インパクトドライバーで使われる6.35mm六角軸に変換できるアダプターです。
角ドライブ9.5sqと12.7sqの2サイズ用のアダプターがラインナップされています。(以前は、HiKOKIから19.0sq用もラインナップされていましたが、2021年7月現在は廃番になっています。)

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12.7sq角ドライブ⇒ドリルチャックへの変換

インパクトレンチの角ドライブを、ドリルドライバーや振動ドリル、電気ドリルで使われるドリルチャックに変換できるアダプターです。

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【番外編】特殊な軸規格
ここまでは電動工具で一般的な軸規格について見てきましたが、ごく一部でしか使われていない特殊な軸や、すでに使われなくなった軸もあります。ここではそんな特殊な軸をご紹介します。
電気ドリル用の六角軸
一般的な電気ドリル用のビットはストレート軸になっていますが、一部の木工用ドリルには、7mmや9mm、10mm、12mm、12.5mmといった六角軸の製品があります。
例えば、スターエムの木工ドリルNo.4シリーズには、7mm・10mm、12mm六角軸のラインナップがあります。

ストレート軸ではなく六角軸を採用している理由は、負荷がかかった際に、軸が滑らないようにするためと思われます。
ハンマードリル用のスプライン軸
マキタHR5000や日立工機PRT-60といったハンマードリルでは、シャンクに12本の溝が刻まれているスプライン軸という特殊な軸を採用していました。現在は生産終了となっています。

6.35mm以外のインパクトドライバー用六角軸
タジマの10mm六角軸
タジマのインパクトドライバー(PT-A200・PT-F300・PT-T600など)は、10mmの六角軸を採用していました。6.35mm六角軸の15倍以上の軸折れ強度ということで、足場業者や鉄骨業者、管工業者から根強い人気がありました。残念ながらタジマは2020年9月に電動工具から撤退、現在は入手困難となっています。
HiKOKI(旧日立工機)
HiKOKIは、日立工機時代にWH14DAというインパクトドライバーで8mmの六角軸を採用していました。こちらも既に生産終了となっており、アクセサリーも含めて入手は困難です。
おわりに
ここまでご覧いただき、ありがとうございました。軸規格&変換アダプタ種類と工具別一覧【六角軸・SDS・角ドライブなど】、いかがでしたでしょうか。皆さまのアダプター選びのお役に立てば幸いです。またご質問などもお待ちしております! お気軽にお問い合わせください。