目次
溶接面の種類
溶接時のアークは、目に見える可視光と目に見えない紫外線および赤外線が含まれています。特に有害な光は、紫外線(200~380nm)および可視光(400~570nm)です。
紫外線による障害:電光性眼炎症。角膜の表層部に障害を与える。目がゴロゴロし(異物が入った感じ)、涙が流れ、まぶたの痙攣を伴った急性症状が数時間後に現れる。通常48時間程度で消滅する。皮膚に受けると日焼け同様の水ぶくれの症状となる。
可視光による障害:光網膜炎。視力低下、視野の一部が見えなくなる、かすんで見えるなどの症状が数週間から数ヶ月続く。
これらの障害を避けるために、溶接作業をする際は適切な溶接面を着用することが必須になります。
では、どのような溶接面を選べば良いのでしょうか?まずは溶接面の種類から見ていきましょう。
手持ち型
昔ながらの溶接面です。そういえば、2012年に金環日食を手持ち溶接面で楽しんでいる子供の写真が話題になりましたね。
手持ち溶接面は自動遮光面に比べると圧倒的に安いのですが、両手が使えないというデメリットがあります。また、装着の遅れやズレなどによって光が目に入る危険性もあります。
通常は外側から素ガラス、遮光ガラス、素ガラスと3枚並べて使用します。一番外の素ガラスがスパッタで汚れたら廃棄して、内側の素ガラスを外側にもってくるようにすると経済的です。
かぶり型
手持ち溶接面と同様に自動遮光面に比べると圧倒的に安いのが魅力です。両手も使えるので、初期コストを抑えたい方にオススメのタイプです。
但し、スパッタによって素ガラスが汚れると交換する必要があるので、その都度コストと手間がかかるというデメリットもあります。
自動遮光面(ヘルメット取付型・キャップ型)
ロボコップまたはアイアンマンのような、自動遮光面。戦隊モノに憧れた方は溶接する予定がなくても、何故か欲しくなってしまうのではないでしょうか(笑)
自動遮光面には明るさを変化させる液晶フィルターと、アークの点滅を検知する光センサが搭載されています。液晶フィルターは、アークが点灯している場合には暗く、消灯している場合には明るくなるように視界を自動的に変化させます。
手持ち型と異なり、常に着用していることができるので、両手を作業に使うことができます。
ヘルメットに取付けるバンドを装着したヘルメット取付型、直接被るヘッドバンドを装着したキャップ型の2つのタイプがあります。
溶接用ゴーグル
自動遮光面に比べて軽く、どんなヘルメットでも使用できるというメリットがあります。デメリットとしては少し価格が高いということ。メガネの上からも着用可能です。
革製遮光面
自動遮光面を選ぶ際の3つのポイント
ここでは溶接面の圧倒的主流である、自動遮光面の選び方を解説します。しかし、基本的な考え方は同じですので手持ち溶接面やゴーグル型を検討の際もご参考になさってください。
1.適切な遮光度のものを選ぶ
まず、何よりも遮光度を確認してください。溶接電流値によって使用すべき遮光度番号がJISで定まっていますので、遮光度が範囲内かどうか購入前に確認が必要です。(下表参照)
低電流のものに遮光度番号が大きいものを使用すると暗すぎて、作業性が悪くなってしまいます。「大は小を兼ねる」というものではないので、適切なものを選ぶことが大事です。
※製品によってはグラインダーモードを搭載し、自動遮光面をかぶったまま、溶接後の研磨・仕上げ作業をすることができるものもあります。
遮光度番号 | アーク溶接切断作業 | |
---|---|---|
被覆アーク溶接 | ガスシールド アーク溶接 | |
5 | 30A以下 | – |
6 | ||
7 | 30~75A | |
8 | ||
9 | 75A~200A | 100A以上 |
10 | ||
11 | 100A~300A | |
12 | 200A~400A | |
13 | 300A~500A | |
14 | 400A以上 | |
15 | – | 500A以上 |
16 |
ビルディで現在取り扱っている溶接面を価格が安い順に並べてみました。ご使用されている溶接機の能力(溶接電流値)を確認して、適切な遮光度のものをお選びください。
メーカー名 | 品番 | 販売価格 | 遮光度 |
---|---|---|---|
RILAND |
X501 |
6,480円 | #11 |
RILAND |
X601 |
8,480円 | #9~13(調整式) |
スズキッド |
EB-200A2 |
12,183円 | #9~#13 |
トラスコ |
TSM20S |
14,602円 | #9~#13 |
マイト工業 |
HAYATE2 |
14,800円 | #8~#13 |
イクラ |
ISK-RG5S |
19,980円 | #9~13 |
イクラ |
ISK-RG5B |
20,800円 | #9~13 |
山本光学 |
LC-700 |
22,871円 | #6~#13 |
山本光学 |
LC-800 |
22,871円 | #6~#13 |
小池酸素 |
KADF-816S |
27,445円 | #5-13 |
イクラ |
ISK-RG5X |
27,800円 | #9~13 |
マイト工業 |
INFO-760 |
28,380円 |
通光時(明):#3 WELD(暗):#8~#13 CUT(暗):#5~#8 GRIND:#3 X-MODE(暗):#8~#13 |
トラスコ |
TSM25S4 |
30,327円 | #9~#13 |
イクラ |
ISK-RG5S4 |
32,400円 | #9~13 |
イクラ |
IS-RG4N |
32,800円 | #9~13 |
イクラ |
ISK-RGG2WS |
33,048円 | #9~13 |
イクラ |
ISK-RG1000 |
35,640円 | #8~12 |
イクラ |
RG-50ALN |
35,640円 | #9~13 |
イクラ |
ISK-RG5X4 |
38,980円 | #5~8、#9~13 |
スズキッド |
EB-300G |
40,284円 | #5~#8、#9~#13(切換スイッチ) |
マイト工業 |
MR-930 |
41,453円 |
WELD:#8~#13 CUT:#5~8 GRIND:#3(固定) |
イクラ |
ISK-RG6SW |
41,472円 | #9~13 |
小池酸素 |
KADF-888S |
41,803円 | #5~13 |
ダイヘン |
MSK-A100 |
47,267円 | #9~#13(無段階調整) |
ダイヘン |
MSK-D100 |
72,170円 |
#4±0.1 WELD:#9~#13 CUT:#5~#9 GRIND:#4 X-mode:#9~#13 |
2.遮光速度が速いものを選ぶ
遮光速度とは、アーク光を感知してから遮光するまでの時間になります。遮光速度が遅いと、アーク発生から遮光するまでの時間(アーク光が目に入る時間)が長くなりますので、それだけ目に与えるダメージが大きくなります。非常に僅かな時間ですが、作業が長時間に及ぶとその僅かな時間が積み重なって、大きなダメージとなりますのでバカにはできません。
遮光速度には「これぐらいがいいですよ」というような明確な基準はありませんが、1/15000~1/25000秒がスタンダードになっています。極端に遅いものを選ばないようにすれば十分でしょう。
下表はビルディで取り扱っている自動遮光面を価格が安い順に並べたものです。溶接面選びにお役立てください。
メーカー名 | 品番 | 販売価格 | 遮光速度 |
---|---|---|---|
RILAND | X501 |
6,480円 | 1/20000秒 |
RILAND | X601 |
8,480円 | 1/25000秒 |
スズキッド | JM-200FF |
10,980円 | 1/25000秒 |
スズキッド | EB-200A2 |
12,183円 | 1/25000秒 |
トラスコ | TSM20S |
14,602円 | 1/25000秒 |
マイト工業 | HAYATE2 |
14,800円 | 1/12000秒 |
マイト工業 | MR-460M |
18,711円 | 1/3600秒 |
マイト工業 | MR-460 |
18,711円 | 1/3600秒 |
イクラ | ISK-RG5S |
19,980円 | 1/25000秒 |
イクラ | ISK-RG5B |
20,800円 | 1/16000秒 |
山本光学 | LC-700 |
22,871円 | 1/25000秒 |
山本光学 | LC-800 |
22,871円 | 1/25000秒 |
3M | 751120 |
23,927円 | 1/10000秒 |
小池酸素 | KADF-816S |
27,445円 | 1/25000秒 |
イクラ | ISK-RG5X |
27,800円 | 1/25000秒 |
マイト工業 | INFO-760 |
28,380円 | 1/20000秒 |
トラスコ | TSM25S4 |
30,327円 | 1/25000秒 |
3M | 751220 |
31,841円 | 1/10000秒 |
イクラ | ISK-RG5S4 |
32,400円 | 1/25000秒 |
イクラ | IS-RG4N |
32,800円 | 1/20000秒 |
イクラ | ISK-RGG2WS |
33,048円 | 1/25000秒 |
イクラ | ISK-RG1000 |
35,640円 | 1/10000秒 |
イクラ | RG-50ALN |
35,640円 | 1/25000秒 |
3M | 701120 |
37,094円 | 1/10000秒 |
イクラ | ISK-RG5X4 |
38,980円 | 1/25000秒 |
スズキッド | EB-300G |
40,284円 | 1/25000秒 |
マイト工業 | MR-930 |
41,453円 | 1/20000秒 |
イクラ | ISK-RG6SW |
41,472円 | 1/25000秒 |
小池酸素 | KADF-888S |
41,803円 | 1/25000秒 |
ダイヘン | MSK-A100 |
47,267円 | 1/20000秒 |
マイト工業 | INFO-2200 |
53,460円 | 1/20000秒 |
3M | 501826 |
61,846円 | 1/10000秒 |
3M | 541805 |
62,175円 | 1/10000秒 |
ダイヘン | MSK-D100 |
72,170円 | 1/20000秒 |
3M | 547725J |
207,114円 | 1/10000秒 |
3.軽いものを選ぶ
作業中はずっと使用するものなので、少しでも軽い方が疲労軽減に繋がります。下にビルディで取り扱っている自動遮光面を軽いもの順に並べました。
「とにかく軽いものが欲しい!」という方は、是非ご参考にしてください。
メーカー名 | 品名 | 販売価格 | 質量 |
---|---|---|---|
3M | 701120 |
37,094円 | 360g |
マイト工業 | MR-460 ヘルメット取付型 |
18,711円 | 375g |
イクラ | ISK-RGG2WS |
33,048円 | 380g |
RILAND |
X601 |
8,480円 | 410g |
マイト工業 | MR-460 キャップ取付型 |
18,711円 | 410g |
イクラ |
IS-RG4N |
32,800円 | 420g |
マイト工業 | MR-460M ヘルメット取付型 |
18,711円 | 425g |
ダイヘン |
MSK-A100 ヘルメット取付型 |
47,267円 | 425g |
RILAND |
X501 |
6,480円 | 450g |
3M | 751120 |
23,927円 | 450g |
マイト工業 | MR-460M キャップ型 |
18,711円 | 460g |
3M | 751220 |
31,841円 | 460g |
山本光学 |
LC-800 |
22,871円 | 470g |
イクラ |
ISK-RG5X |
27,800円 | 470g |
ダイヘン |
MSK-A100 キャップ型 |
47,267円 | 470g |
マイト工業 |
INFO-760 |
28,380円 | 480g |
イクラ! |
ISK-RG6SW |
41,472円 | 490g |
トラスコ |
TSM20S |
14,602円 | 490g |
マイト工業 |
HAYATE2 ヘルメット取付型 |
14,800円 | 490g |
イクラ |
ISK-RG5S |
19,980円 | 490g |
イクラ |
ISK-RG5B |
20,800円 | 490g |
小池酸素 |
KADF-816S |
27,445円 | 490g |
小池酸素 |
KADF-888S |
41,803円 | 490g |
スズキッド | JM-200FF |
10,980円 | 500g |
山本光学 |
LC-700 |
22,871円 | 520g |
マイト工業 |
HAYATE2 キャップ型 |
14,800円 | 525g |
スズキッド |
EB-200A2 |
12,183円 | 528g |
ダイヘン |
MSK-D100 ヘルメット取付型 |
72,170円 | 530g |
マイト工業 |
MR-930 ヘルメット取付型 |
41,453円 | 540g |
イクラ |
ISK-RG1000 |
35,640円 | 550g |
スズキッド |
EB-300G |
40,284円 | 550g |
トラスコ |
TSM25S4 |
30,327円 | 565g |
イクラ |
ISK-RG5S4 |
32,400円 | 565g |
マイト工業 |
MR-930 キャップ型 |
41,453円 | 575g |
ダイヘン |
MSK-D100 キャップ型 |
72,170円 | 575g |
イクラ |
ISK-RG5X4 |
38,980円 | 580g |
イクラ |
RG-50ALN |
35,640円 | 610g |
3M | 501826 |
61,846円 | 610g |
マイト工業 | INFO-2200 ヘルメット取付型 |
53,460円 | 625g |
マイト工業 | INFO-2200 キャップ型 |
53,460円 | 660g |
3M | 541805 |
62,175円 | 715g |
3M | 547725J |
207,114円 | 5000g |
防じんマスクの選び方
ここまで溶接面の選び方を解説してきましたが、溶接面だけでは安全対策は不十分です。溶接面は有害光線から作業者を守ってくれますが溶接ヒュームからは守ってくれません。別途、溶接ヒューム対策を行わなければなりません。
溶接ヒュームって何?
アーク溶接時に発生する煙は溶接ヒュームと呼ばれ、実際は「アークの熱によって溶かされた金属が蒸気となり、その蒸気が空気中で冷却され、細かい粒子となったもの」です。
これを長い年月にわたって多量に吸引すると、肺の組織が線維化し、硬くなって弾力性を失ってしまいます。いわゆる、肺線維症(じん肺)といわれる病気です。肺線維症といえば、石綿(アスベスト)による健康被害が有名ですが溶接ヒュームによっても発症することが知られています。
大きな工場などでは吸引装置などを設置するケースもありますが、防じん対策としてはマスクが最もポピュラーです。しかしながら、防じんマスクも溶接面同様に種類が多く、選定が大変・・・。
安心してください!下のポイントを押えておけば大丈夫です。
防じんマスク12の分類
まず、防じんマスクは使い捨て式と取り換え式の2つに大別され、さらに粒子捕集効率(3段階)、試験粒子の違い(2種類)により12種類に分類されます。ややこしいので、ここはサッと見て頂くだけで結構です(笑)
※背景が黄色になっているところが溶接時に使用できるマスクになります。溶接ヒューム対策で使用する場合は区分1以外を選べばOKです。
試験粒子と捕集効率 | ||||
---|---|---|---|---|
S 試験粒子に固体の塩化ナトリウム(NaCl)を用い測定 |
L 試験粒子に液体のフタル酸ジオクチル(DOP)を用い測定 |
区分1/2/3(粒子捕集効率) | ||
使い捨て式/取り替え式 |
D 使い捨て式防塵マスク |
DS1 | DL1 | 区分1:80%以上 |
DS2 | DL2 | 区分2:95%以上 | ||
DS3 | DL3 | 区分3:99.9%以上 | ||
R 取り替え式防塵マスク |
RS1 | RL1 | 区分1:80%以上 | |
RS2 | RL2 | 区分2:95%以上 | ||
RS3 | RL3 | 区分3:99.9%以上 |
作業内容による防じんマスクの使用区分
背景が黄色になっている部分を見ていただきたいのですが、大事なのはDS2・DL2・RS2・RL2以上の粒子効率を有するものを選ぶということです。
※オイルミストが存在する場合はDL2・RL2・DL3・RL3からお選びください。
・放射性物質がこぼれたときなどによる汚染のおそれがある区域内の作業または緊急作業 ・廃棄物の焼却施設に係る作業で、ダイオキシン類の粉塵のばく露のおそれのある作業 ・そのほか上記作業に準ずる作業 |
RS3 RL3 ※オイルミストなどが存在する場合はLを選択 |
・金属ヒュームを発散する場所における作業(溶接ヒュームを含む) ・管理濃度が0.1mg/m3※以下の物質の粉塵などを発散する場所における作業 ・そのほか上記作業に準ずる作業 ※カドミウム、クロム酸、重クロム酸、ベリリウム、鉛およびその化合物 |
DS2・DL2・RS2・RL2 およびそれ以上の粒子捕集効率を有する DS3・DL3・RS3・RL3 ※オイルミストなどが存在する場合はLを選択 |
・上記以外の一般粉塵作業 |
DS1・DL1・RS1・RL1 およびそれ以上の粒子捕集効率を有する DS2・DL2・RS2・RL2 DL3・DS3・RS3・RL3 ※オイルミストなどが存在する場合はLを選択 |
使い捨て防じんマスク
まずは使い捨てのタイプが初期コストがかからず、導入しやすいのではないでしょうか。部品の交換などのメンテナンスが不要なのでメンテナンス不足による被害を抑えることができます。
取替式防じんマスク
取替式のタイプは初期コストはかかりますが使用頻度が高い方は長い目で見ると安くつきます。但し、使用前後の点検やメンテナンスが必要になります。
別売部品
通常は一番外側から素ガラス、遮光プレート、素ガラスと3枚セットで使用します。溶接面ごとにサイズが異なりますのでご購入の前に確認が必要です。
遮光プレート
素ガラス(カバープレート)
遮光プレートや液晶面をヒュームやスパッタから保護するためのカバーです。素材はガラス(またはプラスチック)です。
ヘルメット取付用金具
以上、「溶接面&防じんマスクの選び方」でした。いかがだったでしょうか?ビルディマガジンでは読者の皆様からのご質問をお待ちしております。少しでも疑問に思った点がございましたら、お気軽に下のコメント欄から投稿してくださいね。全力でお調べいたしますので!