【監督は見た】マンション水まわりリフォーム9つのトラブル実例

マンションリフォームのポイント

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マンション水回りリフォームのトラブル事例

ビルディマガジン読者の皆さん、こんにちは!ベンガルです。今日は前々回に引き続き、マンションリフォームのポイントについて、現場監督として数多くのマンションリフォームに携わってきた私ベンガルがわかりやすく解説します。

前々回の記事、『【監督は見た】マンションリフォーム共用部・専有部にまつわる5つのトラブル事例』はこちらからどうぞ↓

マンションリフォームのポイント【監督は見た】マンションリフォーム共用部・専有部にまつわる5つのトラブル事例

マンションリフォームのプロとはいえ、うっかりミスもあります。経験を積むとおさえるべきポイントが分かってくるのでミスはしなくなりますが、経験が浅いうちはびっくりする様なミスをしてしまい、お客様とトラブルになることがあります。

そんなトラブル事例を皆さんに紹介して、若いリフォームのプロの方に気を付けていただきたいな、と思っています。今回は「水回り編」です。それではご紹介しましょう!

【事例1】キッチンを移設したら、レンジフードの排気ダクトがつなげない?!

水回りリフォームではキッチンは花形。キッチンはリビングダイニング(LD)に面しているので、キッチンを移設することはLDの形も変えるという事になります。主婦としては憧れですよね。マンションリフォームでもキッチンを移設したいという希望はよくあります。

ここでのトラブルは、キッチンを移設したら、レンジフードの排気ダクトがつなげなくなった、というトラブルです。どうしてでしょうか? まず、確認していただきたいのは、キッチンやユニットバスの換気扇の排気の出口は決まっていて、変更できません。排気出口(=ガラリ)はコンクリートに埋め込まれているからです。その出口とキッチンのレンジフードを繋いでいるのが排気ダクトなわけですね。

キッチンダクト
キッチンダクト(筆者撮影)
換気ダクト
換気ダクト(筆者撮影)

通常キッチンを移設すると、その排気ダクトを延長(もしくは短縮)するのですが、このトラブルの原因はマンション特有の「小梁」です! 小梁が横に通っている場合、小梁を越えた向こう側にキッチンの移設計画をすると、排気ダクトが通る高さを考えると、小梁に排気ダクトを通す孔を開けることとなってしまいます。しかし、当然構造躯体である小梁に孔を開けることはできません。

それなら、小梁をかわすために、排気ダクトを小梁の下をくぐらせて、またもとの高さに戻せばいいのではと思いますが、内部結露した場合に結露水の水たまりになり腐食する恐れがあったり、ダクトの曲がりが増えることで管内抵抗が大きくなり換気能力が低下したりするので、原則NGです。

プランを検討する際に、経験が浅い人は小梁の存在を忘れがちです。小梁があることで、本件のトラブルの他に、天井換気扇が入らない、ダウンライトが入らない等のトラブルもあります。

リフォームプラン図には必ず、天井にある「小梁」を書き込むようにしましょう! ただ、天井裏に小梁が隠れている場合は現場調査時には目視できないので、マンションの竣工図で確認するくせをつけることが大切です。

【事例2】キッチンを移設したら、排水が流れなくなった?!

キッチン移設に関してもうひとつ。キッチン移設に際の注意ポイントは「上と下」です。「上」は前述のレンジフードがつながるか?ということですが、「下」は排水横引き管の勾配が適正にとれるか? ということです。

キッチンの排水横引き管の勾配は通常1/50以上必要です。(1mの長さで2cm以上の勾配)マンションでは、排水は室内のパイプシャフト(PS)内にある竪管に集合する仕組みになっていますので、横引き管がその竪管に接合する高さは当然あらかじめ固定となります。

竪管へのつなぎ
竪管へのつなぎ(筆者撮影)
床下排水管
床下排水管(筆者撮影)

よって、キッチンをPSから離れる方向に移設すると、排水横引き管の勾配を適正にとるには、横引き管の設置高さをどんどん高くしないとダメなわけですね。ところが、そうなると床仕上げレベルを高くしなければなりません。

にもかかわらず、意識が低い場合、床レベルはそのままで、排水横引き管を設置してしまう事があります。そうすると基準より緩やかな勾配、最悪逆勾配(水上より水下の方が高い)となってしまいます。

緩やかな勾配にすると、キッチン水栓を少量使用の場合はまだよいのですが、桶にたまった水を一気に流した場合等は、なんと逆流する場合があります! このトラブル解決には、床やキッチンを一旦撤去して排水横引き管ルートを再構築することになりますので、非常に大がかりな工事になり、お客様にも大きなご迷惑をかけることとなります。

キッチン移設の際には、「排水横引き管の勾配が適正にとれるか?」を必ずチェックしましょう!

【事例3】ガスコンロを待望のIHに交換したらブレーカーが落ちる!

IHは主婦の方にとても人気のアイテムですね。しかし、IHを採用するには、「電気容量」に注意が必要です。マンションではお部屋で使用できる電気容量には上限があり、築古のマンションでは上限が「30A」というマンションもあります。

古そうな分電盤
古そうな分電盤(筆者撮影)

IHは単体で15Aは使用します。でも、お部屋の電気製品はIHだけではありませんよね? そうすると、IHを使うたびに、電気ブレーカーが落ちてしまうという、非常に面倒な事になってしまいます。

ガスコンロに変えてIHを採用するかどうかは、お部屋の電気容量上限の他、分電盤の電気回線の状況、使っている電気製品とその使用状況等によりますので、よくよく検討の上お客様に提案する必要があります。

【事例4】ユニットバスを新しくしたら、浴室換気乾燥機がつかない?!

浴室換気乾燥機には電気式とTES式があります。TES式とはガス給湯器を使った温水式のものです。床暖房が有名ですよね。浴室換気乾燥機にもTES式のものがあり、マンションでもたまに採用されています。

浴室換気乾燥機
浴室換気乾燥機(筆者撮影)

ユニットバスのカタログに掲載されている浴室換気乾燥機は電気式のものが多いので、普通に電気式のものを発注して、着工後ユニットバス解体時に「TES式じゃん!」と発覚することがあります。その場合、TES式のものに発注変更をかけるか、電気式のものを設置するために、既存のTES式のものを撤去するために急いで専門業者を呼ぶか(温水を通す管が浴室換気乾燥機に接続されていて、それを撤去処理するため)という事になります。

物理的には処理できることではありますが、発覚したらとても慌てますし、想定外の費用がかかるので、注意しましょう。

【事例5】ユニットバスを移設したら、入口の扉が・・・。

これも、小梁がらみのミスです。ユニットバスを若干移設する事となりました。キワに小梁が通っていますが、ユニットバスはその小梁にはギリギリ干渉しませんでした。よって、移設位置をその場所に確定しました。

ところが、小梁のある箇所にユニットバスの入口がきていて、入口扉は背が高いのに、小梁下寸法はそれより低くなることが判明! つまり低い小梁をくぐってユニットバスに入るわけですね。実用的には問題ないけど、見れば見るほどなんか変な収まりです。このことが判明したのが実際に工事を行っているときでしたのでどうしようもありません。どこかのタイミングで誰かのチェック機能がはたらかなかったのかね、と残念です。

【事例6】○○○を間違えたら、トイレは設置できません!

○○○は「排水芯」が正解です。トイレの交換って、古いのを外して新しいのを取り付ければいいので、簡単! と思われがちです。それはそうなんですが、排水芯違いで失敗する事って結構あります。

トイレの排水は「壁排水」と「床排水」の2タイプがあります。ここで排水芯とは「壁排水」の場合は床から排水管中心までの距離、(120mmタイプと155mmタイプがあります。)「床排水」の場合は便器後方の壁から排水管中心までの距離です。(200mmタイプ他があります。)

トイレ壁排水
トイレ壁排水(筆者撮影)
トイレ床排水
トイレ床排水(筆者撮影)

よって、排水方式はもちろん、排水芯に適合したトイレを選定する必要があるのです。特に注意が必要なのは、「リモデルタイプ」のトイレです。

リモデル便器排水
リモデル便器排水(筆者撮影)

「リモデルタイプ」は床排水の場合、排水芯が一定の範囲で可変することができます。だからといって、床排水の場合何でもかんでも「リモデルタイプ」を頼めばいいというものではなく、「リモデルタイプ」は床排水芯200mmには対応できません。よって、床排水200mmの場合はそれに適合したものを選定する必要があります。

とはいえ、リフォーム業界の人は経験が浅いうちは1度は失敗する「あるあるネタ」ではありますので、くじけず頑張りましょう!

【事例7】トイレに新しく設置した手洗い器、最近何か臭うんですよね。

トイレに今まではなかった手洗い器を設置する場合の注意です。とても人気のあるタンクレストイレに変更すると手が洗えなくなるので、トイレ内に手洗い器を設置する場合もあるかと思います。

手洗い器の排水管をトイレの排水管に接合すると、手洗い器の排水トラップの「封水切れ」が発生する恐れがあります。排水トラップとは排水管がU字型に曲がっていて、そこに水が常時たまる(これを封水といいます)ことで排水の悪臭があがってくることを抑制するものです。

手洗器トラップ
手洗器トラップ(筆者撮影)

トイレの水を流した際、流れる勢いが強いので、排水管でつながっている手洗い器の封水をもっていってしまう場合があります。封水がなくなることを「封水切れ」といいます。封水が切れると悪臭があがってきて、トイレ内に下水の臭いがするようになります。

手洗い器の封水切れを防止するには、排水管をトイレ以外の洗面などの排水管につなぐか、手洗い器の排水管に「ミニドルゴ通気弁」(空気を抜くことで封水がもっていかれないようにします)という設備を設置して、通気を確保してあげる、などの方法があります。

【事例8】洗面台のこの隙間一体どうするの??

マンションの洗面台は壁壁間にぴったりと収まっています。これはマンションを新築する場合、メーカーにサイズオーダーして製作しているからです。(マンション1棟で数が多いので、メーカーで対応してくれるのです。)

しかし、カタログ既製品の洗面台の幅は、750mm、900mm等の様に固定サイズとなります。(上位機種はサーズオーダー可能な商品があります。)何も考えず、固定サイズのものを選定すると、壁間は既存のままにすると、5cmとか変な隙間が開くことがあり、「この隙間どうするのよ!」とお客様にお叱りを受けることになります。

洗面台のスキマ
洗面台のスキマ(筆者撮影)

固定サイズの洗面台を選定する場合は、そうならないために、あらかじめ壁をふかしておくとか、隙間にカウンターを設けるとか工夫が必要です。もちろん、サイズオーダーできる商品を選定するのもよいです。新築とリフォームの違いを理解して、適正な提案をしましょう!

【事例9】洗面室壁の分電盤を忘れて大失敗!

マンションでは分電盤の設置位置は、玄関収納をはじめとするの収納の中や廊下などいろいろです。昔のマンションはよく洗面室についていることがあります。本件失敗は下記のような場合です。

  • 既存洗面台は大きな1面鏡
  • お客様は鏡裏収納のある三面鏡を希望
  • 分電盤は鏡のすぐ横の壁に設置されている

なんとなく、トラブルの内容が分かってきたでしょう? そうです。三面鏡の鏡を開けると分電盤にぶつかってしまうのです! 1面鏡の場合は問題ないのですが、リフォーム後をきちんとイメージできていなければ陥るミスですね。

分電盤と洗面
分電盤と洗面(筆者撮影)

おわりに

リフォームのプロとして、失敗はお客様にご迷惑をおかけし、かつ無駄な費用もかかってしまうため、絶対にしてはなりません。とはいえ、人間ですから誰でも失敗はします。一度痛い目に会うと同様の失敗はしないものですが、周りの人の失敗事例にも敏感になり他山の石とすることも大切です。こちらで紹介したトラブル事例が少しでも皆さんの現場のお客に立てれば幸いです。

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